#8 コンギツネの恐竜

ある日曜日の午後、
僕は、家でテレビを見ながらのんびりしていた。

コンギツネは、外に散歩に行っている。

コンギツネには、外に出る時は
"帽子をかぶって、
キツネの耳を隠すように"
と言っている。
大きな尻尾に関しては、隠しようがないが、
そういうアクセサリーに見えなくもないだろう。

ガチャッ

家のドアが開き、コンギツネが帰ってきた。

「ちょっとちょっと、タチバナさん、
これ見てください。」

そして、帰るなりいきなり僕にそう言ってきた。

「どしたのさ?」

僕はそう言って、コンギツネの方を見ると、
コンギツネは何らや丸い石のような物を抱えていた。

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「これ、さっき外の公園で拾ったんですけどね、
何だと思います?」

コンギツネはそう言うと、その石のような物を、
僕の方に見せてきた。

「いや、何って言われても‥
ただの石ころじゃないの?」

僕は、それを見ながら答えた。

「確かに石みたいに見えますけどね、
私、これ何かの
"卵"じゃないかと思うんですよ!
触るとなんかあったかいし。」

コンギツネは、その丸い物を見ながらそう言った。

何?‥卵?

‥確かにそれは、触れるとやや温かかった。
そして、丸と言うよりは、やや楕円形といった形をしていた。
卵っぽく見えなくもない。

が、しかし、
それは大きさが30cmくらいあった。
ダチョウの卵にしても大きすぎる。

「いやー、
さすがに、そんな大きな卵はないでしょ。」

僕はそう言ったが、コンギツネは、

「いえ、これはきっと
"恐竜"
の卵なんですよ!
それなら、この大きさも納得がいきます。
私、これを温めてみることにします。
孵してみせます!」

と、キラキラした目で言ってきた。

‥恐竜て‥、

バカバカしい、何を小学生みたいなことを‥。


僕はそう思ったが、
構わずコンギツネは、
毛布を引っ張り出してきて、その卵らしき物を丁寧にくるんだ。
そして、セラミックヒーターの前に置き、
じっと見守っているのだった。

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僕は、またよく分からん事をしてるなあと思いながらも、
すごく一生懸命にやっていたので、
なんであれ真剣に取り組むのはいいことだと考え、
"温かい目"で見守ることにした。



それから3日後、


ピキピキッ

その卵のような物に突然ヒビが入った。


そして、

パカッ

と、中から、恐竜の子供が出てきたのであった。

「う、嘘だろ‥!?
ま、まさかホントに‥‥。」

僕は驚愕した。
そいつは、まだ小さかったが、
子供の頃に図鑑で見たような
"首長竜"
そのものだった。

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「そーら、見てください!
やっぱり恐竜の卵だったんですよー!」

コンギツネは嬉しそうに言った。

「ピューイ、ピューイ。」

その恐竜は、可愛らしい鳴き声をあげた。

「この子の名前は"ピー助"にします!
ピーピー鳴くからピー助!」

コンギツネは、優れた決断力で、
恐竜の名前を即決した。
そして、

「この子は私が育てます!
立派な恐竜に育て上げてみせます!」

と言ったのだった。



つづく