#16 コンギツネと謎の生き物②

川岸の土手をウォーキングしている途中、僕とコンギツネは、

ポケットモンスターの"ピカチュウ"に遭遇した。


コンギツネが不用意に近づいたことで、身の危険を感じたのか、

ピカチュウは、僕らに対して臨戦態勢をとっていた。

全身の毛を逆立て、牙を剥き、


フーッッ!


と、うなり声を上げている。

頬の辺りには、バチバチと電気を溜めているのが見てとれた。

いつでも、こちらに対し放電攻撃をできるぞ、と言わんばかりだ


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大きさは猫ぐらいであり、とても可愛らしい見た目をした生き物ではあるが、

その実、性格は極めて攻撃的なようだ


これは、

下手に刺激をすると非常に危険だ、

と僕は思った。


そこで、僕はコンギツネに、


「‥こいつ、結構危険な生き物みたいだ。

どうにか刺激しないように、ゆっくりこの場から離れよう。」


と小声で提案した。

それを聞いて、コンギツネは小さく頷いた。


そして、僕らは、ピカチュウを驚かせないように、ゆっくりと後退りをし始めた。

ピカチュウは、まだこちらに対して、威嚇するような体勢をとっていた。


‥と、そのときだった。


ヒュルルルルルルッ!!


と、どこからか、

直径10cmくらいの、丸い"ボール"のような物が、

ピカチュウ目掛け飛んできた。

ピカチュウは、僕らに気を取られていたためか、それに気付くことが出来なかったようだ。

そのボールのような物は、そのまま


パコッッ!!


と、ピカチュウの頭に命中したのだった。


ピカチュウは一瞬びっくりした顔をした。


が、

次の瞬間、


バシュウウウウッッ!!


と、なんと、そのボールの中へ吸い込まれていってしまった。


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‥‥‥

ま、まさか‥、今のはあの‥、ゲームにも出てくる

"モンスターボール"か‥!?

ポケモンを捕まえるためのアイテムの‥。

だけど、一体どこから‥!?


僕は、ボールが飛んで来た方向に目をやった。

すると、そこにキャップをかぶった小学生ぐらいの男の子が立っていた。


その男の子は、


「やったぜ!ピカチュウ、ゲットだ!」


と言いながら、こちらに近づいてきたのだった。



男の子は、僕とコンギツネの存在に気がつくと、


「‥あれ?‥お兄さんたち‥

お兄さんたちも、もしかして、このピカチュウを捕まえようとしてたの?」


と、聞いてきた。

僕は、


「‥え‥?い、いや‥、そんなことはないけど‥‥。」


と、とりあえず答えた。

すると、その子は、


「そうですか。そしたら、このピカチュウは僕がもらっちゃいますね!」


と言って、ピカチュウが入っているモンスターボールを拾い上げた。

そして、


「僕の名前は、"サトル"。

僕は、ポケモンを全種類捕まえて、"ポケモンマスター"になることを目指しているんです!」


と言ったのだった。

‥‥‥

‥なんだ、この子は‥。


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サトルと名乗ったその男の子は、ポケットの中から、

表面にカメラの付いたスマホのような機械を取り出した。

サトル君は、


「これは、"ポケモン図鑑"です。このポケモン図鑑の中には、様々なポケモンのデータが入っているんです。」


と言いながら、その機械のカメラを、モンスターボールの中のピカチュウに向けた。


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すると、機械の画面には、


ピカチュウ

ねずみポケモン

高さ:0.4メートル

タイプ:電気

Lv.:3

技:なきごえ、でんきショック

特徴:頬に電気をつくるための電気袋をもつ』


というデータが表示された。

‥すごい機械だ。


そのデータを見たサトル君は、


「レベル3か‥。ここから、まだまだ強く育てていかなきゃいけないな。」


と、つぶやいた。


それから、僕らの方へ向いた後、


「‥それにしても‥、

お兄さんもずいぶん強そうなポケモンを持っていますね!」


と、

"コンギツネの方を指差しながら"言ったのであった。


‥‥‥

‥ん?


僕は、突然何を言うんだろうと思いながらも、


「‥え?‥いや‥、何言ってるんだ?

ポケモンって‥、

このお姉さんのことを言ってんのかい?

失礼なことを言うなあ、君は。」


と、笑いながら答えた。

僕は、この子は冗談で言っているのだと思った。

しかし、サトル君は首を振りつつ、


「いやいや、僕の目は誤魔化せませんよ。

そこのお姉さんが人間じゃないことは、一目見れば分かります。」


と言いきったのだった‥。


‥‥‥

‥え?‥嘘だろ。

コンギツネが人間ではないことを、あっさりと見抜いてしまったのか‥。

ちゃんと、キツネ耳も帽子で隠しているのに‥。

この少年、ただものじゃないぞ‥!


僕はそう思った。

コンギツネも、びっくりした顔をしていた。


さらに、サトル君は、


「だけど、見たことのない種類のポケモンだなあ‥。すみません、ちょっといいですか?」


と言って、ポケモン図鑑のカメラをコンギツネの方に向けてきた。

すると、ポケモン図鑑の画面に、


『コンギツネ

???ポケモン

高さ:1.6メートル

タイプ:悪

Lv.:????

技:????

特徴:詳細なデータなし。どうやら新種のポケモンのようだ。』


と、表示されたのだった。

それを見たサトル君は、


「すごいな、ポケモン図鑑にもデータが載ってないなんて‥。

ずいぶん、珍しいポケモンなんですね。」


と言ってきた。


‥‥‥

いや‥、だから、

たしかにコンギツネは

人間ではないけども‥、別にポケモンでもないんだが‥‥、


と、僕は言おうと思ったが、

でも、じゃあ何だ?と聞かれたら、説明するのも面倒なので、特に何も言わなかった。


コンギツネは、


「誰のタイプが"悪"ですか!!」


と、プンプン怒っていた。



それから、サトル君は別れ際に、


「そうだ、実は来週の土曜日、

ポケモンバトルの大会があるんです。

それで、僕、このピカチュウの腕試しも兼ねて参加してみようと思っているんですけど、

良かったら、お兄さん達も見に来てください!」


と言って、1枚のチラシを渡してきた。

そのチラシには、


ポケモンリーグ 2022  in 幕張メッセ


と書いてあった。




つづく