#2 コンギツネの過去
「あれはもう、今から1000年以上昔のこと。日本が平安時代と呼ばれていた頃のことでした。
当時の私は''妖狐''という悪いキツネの妖怪でした。
強力な妖術を操ることのできた私は、
当時の人間達に対して、極悪非道な悪行の数々を繰り返していたのです。
都を焼き払ったり、
田畑を荒らしたり、
むかつく公家をなぶり殺しにしたり、
幼い男児をつかまえて性的なイタズラを
したりしていました。
それはそれはもう、平安の人々を恐怖のどん底に陥れていたのです。
しかし、そんなことを繰り返していたある日、
私の悪行を見かねた1人の武闘家が、私の前に現れました。
そして、その男はこう言い放ったのです。
"おのれ、憎くき妖狐め!
貴様の極悪非道の所業の数々、もはや許すまじ!
我が秘術をもって永遠に封じ込めてくれる!
人々の怒り、恨みを思い知るがいい!
くらえっ!!
魔封波ーーーっっ!!"
そう叫ぶと、武闘家は気をためて、私に向け放ちました。
そして、気がつくと、私は赤いきつね️の中に封じ込められてしまっていました。
その武闘家は、自分の生命と引き換えに、
"魔封波"を使って私を封印することに成功したのです。」
‥‥
平安時代に‥‥
‥なぜ赤いきつね‥‥?
僕は、コンギツネの支離滅裂な話にツッコミを入れようとした。
が、そしたら彼女は不機嫌そうな顔をしたので途中でやめた。
「それから、1000年以上の長い間、私はずっと閉じ込められていた訳ですが、
さっきあなたが蓋を開けてくれたおかげで、再び外の世界に出ることができたのです。」
「‥はあ‥まあ、なんかよくわかんないけど‥、
とりあえず今の話からすると、僕はとんでもなくヤバいやつを解き放っちゃったってことかい?」
僕は半信半疑ながらも尋ねた。
するとコンギツネは、首を振りながら言った。
「あ、いえ、私も1000年以上も封印されていた間に、それまでの行いを反省しました。
そう、今思えば、あの頃は私も若くてヤンチャだったのです。」
「はあ‥。」
''ヤンチャだった''で都を焼き払われた平安の人達の気持ちを考えると、あまりにも気の毒だと思った。
「たとえば、元ヤンキーのギャルとかも、
年月を経たら、立派な社会人になったり、子を持つ母になったりするものじゃないですか。
同じように、私も、
これからは過去の行いに対する償いもかねて、何か人や社会の役に立つような活動をしていこうと考えているのです。」
コンギツネは目をキラキラさせながら言った。
「‥はあ‥、そうなんだ‥、
まあ、それはいい事だと思うけどさ。」
僕は、そう言いながら、
正直どうでもいいから、
早く出てってくれないかなと思っていた。
明日も仕事あるし‥。早く寝たい‥。
「というわけで、まずは手始めに、
封印を解いてくれたあなたに何か恩返しをしなければいけませんね。
なので、しばらくあなたのお家にご厄介になることにします!」
‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥ん!?
つづく